トレー町工場の後継奮闘記_家業編④ 〜バトンの受け取り方〜
本日のテーマは『家業の既存事業を次世代に繋ぐためにやったこと』です。
基盤である家業の既存事業は、次世代に繋がるのか?
乗り越えるべき課題があるとしたら、それは一体何なのか?
そして、どうすればその壁を乗り越えられるのか?
自分の実際のアクションとともに経験を記載していきます。
自分が後継として描いたストーリー
- 50年先の不確実性を払拭するために新しいことをやる必要がある
- 新しい動きに集中するために、まずは既存事業を次世代につなぐ基盤を整えるべき
- 新しい動きで利益を生み、次世代を採用する余力を蓄える
- 会社の魅力がupした状態で、次世代を担う人材を獲得する
- 次世代へのバトンタッチを実現させる
- また新たな挑戦をする
家業の既存事業を次世代につなぐために必要なこと
一体なにが課題になり得るのでしょうか。
会社の経営資源「ヒト」・「モノ」・「カネ」・「情報」に分けて考えてみましょう。
- 父も社員の方も5年以上はご定年まで時間がある
- 設備や建屋も都度メンテが出来ており、問題なく使える
- 現状としては、黒字で運営がなされている
経営資源 | 解決の優先度 |
---|---|
ヒト | 冒頭の4番で解決するので列後 |
モノ | 老朽化に合わせて設備投資 |
カネ | 冒頭の3番で解決するので列後 |
情報 | 最優先☆ |
「情報こそが次世代への承継のネックになり得る経営資源である。」
それでは、情報とは一体何でしょうか。
私が家業で世代交代のネックになり得る情報とは
「オフィス(見積/受発注)の情報」・「現場(生産管理/製造)の情報」です。
世代交代のために必要な情報(見積/受発注)
質問です。
お客様から電話が来た際に、
「社長に確認します。」しか言えないということはありませんか?
父の携帯だけの方が効率いいのでは?もはや事務所の電話いるのか?
何より電話でお客様に何もご回答を出来ないことが悔しい。
これが自分が家業に戻って初めに味わった悔しさかもしれません。
大体既存事業に関するお客様からのお電話は下記だと思います。
- 新規見積をお願いしたい
- 発注をしたい(+この納期までに間に合うか?)
- 納期を確認したい(変更の相談をしたい)
お客様からの電話に自力で回答するために知っておくべきことをざっくりとまとめました。
質問形式にしていますので、チェックリストの様にご使用下さい。
情報種類 | チェック項目 | 用意すべきデータ/情報 |
---|---|---|
見積 | 1個あたりどれくらいの量の材料が必要かわかりますか? | ・材料取りのルール ・見積フォーマット ・これまでの見積データ |
材料単価はわかりますか? | ・材料価格表(過去発注実績) ・材料サプライヤーリスト | |
1個あたりの加工時間はわかりますか? | ・過去見積データ ・加工時間リスト(実績ベース) | |
梱包資材費はわかりますか? | 梱包資材の種類と価格の紐付きデータ | |
輸送費はわかりますか? | ・見積フォーマット(重量計算機能付き) ・輸送費価格表 | |
受発注 | 製品を受注したときに、必要な材料が何かわかりますか? | 製品と材料の紐付きデータ |
実際に必要な生産数量はわかりますか? | 在庫数量 | |
生産数量に対して、必要な材料/梱包資材の量はわかりますか? | ・1個あたりに必要な材料/梱包資材の量 ・想定される不良率 | |
その材料/梱包資材はどこへ発注すればよいかわかりますか? | ・材料と材料屋さんの紐付きデータ ・梱包資材の種類と資材屋さんの紐付きデータ ・発注時の単位量 | |
ところで顧客の希望納期に間に合うかわかりますか? | ・必要数量の生産にかかるリードタイム (サイクルタイム&不具合率) ・現状の生産混み具合 | |
納品先はわかりますか? | 製品と納品先の紐付きデータ (都度顧客から指定がある場合は不要) | |
輸送を依頼はできますか? | ・お付き合いのある運送会社 ・その時々の運送会社の選び方 ・実際の依頼の仕方(システム使用方法や記入すべき事項) |
結構大変ですよね。。。
自分の家業では、これだけの情報がほとんど父の頭に入っていました。
父にさえ電話が繋がればお客様は即座に回答が得られるのです。
正直、次世代の引き継ぎが不要であれば、最大限効率化された状態と言えると思います。
世代交代のために必要な情報(製造)
ここでは、少し広い意味で「製造」というワードを使用します。
それぞれを次世代が出来るようになるために必要な情報をまとめました。
(※こちらもざっくりです。)
チェック項目 | 用意すべきデータ/情報 |
---|---|
生産計画は作れますか? | ・所要時間 ・製品ごとに必要な工程 ・製品ごとにあてがうべき設備 |
実際に製造はできますか? | ・基本的な製造手順(検査手順含む) ・製品ごとの製造手順(検査手順含む) ・使用すべき金型/工具と場所 ・製品ごとの品質基準 |
生産進捗を把握し、必要に応じて調整ができますか? | ・生産日報 ・進捗確認プロセス ・調整プロセス |
どのように梱包すればいいかわかりますか? | ・基本的な梱包方法 ・製品特有の梱包方法 |
出荷はできますか? | ・必要な伝票やラベルおよびその同梱方法 ・出荷場への置き方 |
製造になるとデスクワークではなく、リアルでの作業が出てきます。
どうしても一部は、データではなく、手順書などが必要なケースも出てきます。
データでは解決できない部分を把握するためにも、家業に戻ったら短期間でも現場に入ることは必須だと思います。
私は家業に戻って数ヶ月は、「一次情報を得るために午前中は現場に入る。」ということをしていました。
そして、作業中も写真を撮影し、作業の空き時間にマニュアルを書き溜めるということをやっていました。
進め方のご紹介
出来るだけ仕組みの力で解決する
これは、前職のベンチャー時代に学んだことです。
個人がど根性で頑張ることは、決して悪くないと思います。
しかし、それでは次世代へのバトンタッチが毎回ハードになります。
仕組みにして、工数を最小化できれば、託す側も託される側もハッピーなのではないでしょうか。
- データや仕組みで解決する方法の検討
- 短期間でも現場に入ることは必須
- 現場を知らずに自分の案を押し付けるのは最低だと思っています
- それによるメリットの言語化
- 先代との合意
- 現場の方との合意
- データや仕組みの準備
- 現場トライアル&修正
- 標準業務手順として確立
哲学
- 『最悪必要なことはこの情報を見ればわかる』になれば、世代交代の基盤は完成といってもいいのではないか?
- 必要なデータが勝手に溜まる仕組みを作れば、必要なデータが完全に溜まるまで待たなくてもいいのではないか?
- そうすれば安心して新規事業ができるんじゃないか?
メリット(社長、後継者、会社としての)
- 後継者がとりあえず3年現場に張り付くが不要になる
- 早く次の柱を作りに動ける
- 次世代の社員が入社したときに、すぐに働けるようになる
- 自分の更に次の世代につなぐ際の工数がめっちゃ減る
- 結果として、先代の会社存続という思いは果たされる
メリット(現場の方)
- 日々の成果が可視化され、目標設定&評価が可能になる
- 評価制度の設計などは別途必要
- 現場手計算が減る
- 物を探す時間を極小化できる
- データ化やマニュアル整備により、決まった人しか出来なかったことにも挑戦しやすくなる
- それにより昇給なども狙える
- 新規事業等で昇給をする余裕があることは条件
合意形成
- 同じ野望を掲げる
- to社長:「会社を50年先まで存続させたいのは同じでしょ?」
- to社長世代の社員さん:「あなただからできる次世代のためにやれることがこんなに沢山あるんです!やりがいに繋がりませんか?」
- to次世代の社員さん:「未来を切り開いてくるので、背中預けさせて下さい。」
- 上記メリットをちゃんと伝える
- 最低限現場を学び、現場の負担にならず、現場にメリットが出る仕組みを作ることを伝える
- 将来改めて自分もしっかり現場を学ぶことを伝える
データや仕組みの準備
実際にどんなデータを用意したのかまとめています。
是非こちらを参照下さい。
町工場/中小企業専門のDXサポートも行っています。
現在、ヒアリングやアドバイスは無償です。
是非お気軽にご連絡ください!自分のSNSへのメッセージでもOKです!
リクエストお待ちしております。
みなさんいかがだったでしょうか。
少し人間味が足りない文章だったと反省しております。。。笑
皆様のコメントをお聞かせください。
もっと親子でぶつかった場面を書けよ!
実際、データ化で苦労したことを書けよ!
チェックリストもっといい感じにして無料で配れ!
考え方のコツとかないの? などなど
次回は、土台が固まった体で、自分がやってみた新規の取り組みを紹介します!
引き続きよろしくお願いいたします!