後継奮闘記-ベンチャー挑戦③-
周囲の方に支えられ、初めて課題解決をやり切った後、ベトナム駐在のチャンスを頂きます。
海外で仕事をすることの難しさ/大切にすべきことを書きます。
- 海外での仕事に興味がある方
- これから海外で働かれる方
- 海外で働きたいと思っている方
概要は以下をご覧下さい。
担当業務の平定とベトナム配属
正直辞めたいと思っていた時期、創業者の方が2人でランチをする時間を下さいました。
「正直ずっと期待通りの経験機会を渡せているか心配していた。
周囲の要望もあり、今のロールを任せ続けていた。
この課題を解決したら、後継として活きる経験をしよう。」
このお時間を頂いていなかったら、自分は逃げるように辞めていたと思います。
この創業者の方には本当に感謝をしてもしきれません。
モチベーションを頂いた自分は、必死に下記をやり切りました。
- 担当顧客の傷基準の明文化、顧客/パートナー双方との合意
- フレーム案件の品質立て直し
- 初めての部下のミドルマネジメント/バトンタッチ
ちょうどその頃、会社の中で新たな取り組みが始まりました。
「ベトナムから仕入れて日本で売る」
日本の町工場で日本の生産管理を学びたかった自分は、初めベトナム行きを拒否していました。
しかし、入社依頼ずっと自分を見てくれていた上司からからの言葉で全ての意識が変わります。
「サラリーマンとして、会社の責任の下で大きな挑戦を出来るのはこれが最後。家業に戻ったらこんなに大胆な挑戦は出来ないかもしれない」
(後に本人がベトナムに行きたくなかっただけという噂を耳にしましたが、本当に感謝しています。)
そうして、ベトナムローカル企業で最大の加工会社との品質立ち上げにアサインして頂きました。
人も設備もルールもあるが、言語の壁は大きい
これまで国内で品質の経験はしてきたものの、言ってしまえば素人です。
正式な監査なんてしたこともありません。
必死になってベトナムへ渡る前に準備をしました。
- 国内での顧客/パートナーとの品質立ち上げの経験から現場チェックリストを作成
- 元トヨタの方などからひたすらフィードバックを頂く
- チェックリストを元に、初めの1週間でベトナム現場に徹底的に入り込む
実際に現場に入った時は驚きでした。
ズラッと並んだ設備、若者が多く活気ある現場、ISOも9001/14001を取得
「この勢いでは日本もすぐに追い越されてしまう」
しかし、現実は甘くはありません。
改善案を合意し、実装されたことを確認したものの、
なぜか品質レベルがターゲットまで上がり切らない。
土日も検査メンバーと現場に入りながら、もがき続けました。
考えられる理由はただ一つです。
「合意の上で実装されたルールが、実は現場で正しく運用されていなかった」
ベトナム語がわからない自分には、
現場作業者の本当の動きや課題を拾い切る力はありませんでした。
現地化の重要性と難しさ
自分がベトナムに駐在し始めて2ヶ月。ついに現地採用のメンバーが来ました。
日系企業で品質の経験があり、日本語も話せます。
現場での課題に対する解像度が格段に上がり、改善施策の精度も高まりました。
海外で仕事をする上で、現地メンバーの力は絶対に必要
- 現場で発生している課題が正しく把握できる
- 課題を正しく把握することで、効果的な打ち手を選択できる
- 本当の意味で改善が機能しているかを評価できる
一方で現地化を推し進めるには、難しさも存在します。
例えば、日本語が話せる現地メンバーと英語が話せる現地メンバーの共存です。
日本人が日本語を話してしまうと英語が話せるメンバーは、議論に入れません。
会議に参加するも日本語ばかりという状況もしばしばでした。
黙ってweb会議を抜けてしまうメンバーを見て、日本人がいる限り、
現地メンバーが100%活躍することは出来ない。成長も阻害してしまう。
下手したら辞めてしまうと強く思いました。
日本人なしでの組織運営が一番大切
- 個人個人の課題解決の基礎力向上
- 信頼してリーダーを任せられる現地メンバーの採用/育成
- 現地メンバーのみで組織として機能する体制の構築
自分よりも専門知識が高いメンバー達をまとめることの難しさは、
また別の記事で記載させて頂きます。
工場経営という観点の大切さ
「加工」や「検査」だけを現場に伝えることで、立ち上げが完了するわけではありません。
通常の「技術指導」の場合は、それでいいかもしれません。
しかし、「品質立ち上げ」を完了させるには、「加工」や「検査」を正しくワークさせるための「ルール」や「運用」までを完成させる必要があります。
立ち上げには、工場経営の観点が必要
- 加工,検査のやり方の説明
- 品質担保のための現場ルールの合意/実装
- 現場が実行可能な必要最低限のルールを考える
- 一緒に妥協点を考え抜く
- パートナー側の経営者の合意を得られるか?
- 運用を定着させるための環境作り
- レイアウト変更や人員増強は必要か?
- 現場の人が納得したルールになっているか?
- パートナー側の経営者の合意を得られるか?
結局は相手の経営者が納得してくれないと現場は変えられません。
そのために自分も経営者の視点を持つ必要があります。
どうしても外せない条件は入念に説明をしつつ、
過度な負担がなく、メリットがある提案を心掛け、合意形成をする。
自分がやれることは徹底的にやり切る。
相手を尊重し、現場を尊重し、自分も汗水垂らしながら現場に入る。
現場が納得したルールを作るために、検査員の勉強会の時間をお借りして、
現状課題への打ち手を全員で考え、決定したこともありました。
製造業ではなくても、海外ではなくても、どんな業界でも大切なことだと思います。
振り返って
正直苦しいこともたくさんありました。
また、自分の無力さに落ち込む日々もありました。
そんな中で得られるものは本当に価値がありました。
- 製造業にどっぷり浸かり、難しさや改善遂行を身をもって体感
- 自分より専門知識のあるメンバーへのマネジメント/組織立ち上げを経験
- 心から尊敬できると思える方とのご縁
心から尊敬できる方には、上記の考え方を全て教えて頂きました。
誰よりも現場に入り、汗水垂らす姿は忘れません。
改善提案の作成の壁打ちにも何度もお付き合い頂きましたし、
自分が落ち込んでいる時は、必ずお腹いっぱいご飯を食べさせて下さいました。
(またどこかのタイミングで当時を振り返りつつご紹介させて頂きます。笑)
次回からは徐々に家業の話にシフトしていきます。
「どうして家業に戻ることを決意したのか」「戻ってから何をしたのか」
後継として思ったことや行動を記載していきます。
ご紹介
家業での取り組みを活かして中小企業の事業承継問題に少しでもご協力出来ないかと思い、
Legacy Linksというサービスを立ち上げました。現場データ化サービスです。
(無償ヒアリングを通し、作業標準化後に事務作業を外注頂けるかご相談させて頂きます。)
父からの事業引継を進めている私自身と、
誰かから事業を引き継ぎ、事業作りをしたい渡邊の2人で動いています。
色々な方と繋がりたいの一心で動いております。ぜひお話しさせてください。