トレー町工場の後継奮闘記 商社編②
商社編②では、初のメイン担当について記載します。
若造にいきなり景気の波(過剰在庫)が襲いかかります。
そこで学んだ製造業の営業としての基礎を書き綴ります。
最後には、この経験をどう家業に活かしているか熱弁しております。
記事を読んで下さった方に『よし、明日をもっと熱い一日にしよう』と思って頂くことがこの記事のゴールです。
初担当は機械部品の在庫商売
ついに言い渡された初担当。そこでの業務内容と当時の景況感を説明します。
在庫商売の流れ
業務は新規案件獲得と量産対応の2つです。
在庫商売の新規営業
まずは攻めの営業です。本来であれば1番時間を掛けたい部分です。
- モデルチェンジや新規開発案件の情報を如何に掴むか
- 最終的には全開発チームのリーダーの方々と商談を重ねさせて頂きました。
- 如何に適切な提案をして搭載まで持ち込めるか
組織攻略については、後日別記事にて記載致します。ぜひまた見にきて下さい!
量産対応
次は守りの営業。お客様の円滑な生産活動をサポートします。
- 生産フォーキャストを元に発注
- 在庫数を適切に管理しつつ納品
- 不具合、納期調整、価格変更等に素早く対応
当時の業界背景
自分が入社した2019年がどういったタイミングだったのか、説明します。
盛り上がるスマホ需要
自分が大学生だった2016、2017年頃はiPhone等が爆売れしていた。
それに伴い、機械も売れていたと言います。私はそのような好況は経験していません。
米中貿易摩擦
トランプ大統領となり、貿易摩擦が一気に加速。
私が社会人になる頃、既に景気は良くありませんでした。
長期在庫・もういない旧担当
張り切って担当業務に臨んでいた矢先、指導担当の先輩から驚きのコメントが。。
「在庫、結構大変なことになってるんだよね。」
私は大きな不安に襲われました。
長期在庫の発生
好景気からの景気悪化。この景気の波が長期在庫を積み上げます。
- 部品納期も長期化
- 半年以上先の発注を積み重ねる
- 急な不況で使用数が激減
発注キャンセルが出来ない分は、続々と倉庫に到着します。
過去との戦いの幕開け
新人の私は、先輩に聞きながらやれば何とかなると思っていました。
しかし現実はそう甘くはありませんでした。
「あぁ、当時の担当の方はもう退社してるんだよね、、、」
新人には絶望的な事実でしたが、落ち込んでいても仕方がありません。
私は議事録、受発注システムをひたすら遡りました。
確認作業で連日残業した日々を、今でも思い出します。
苦悩の課題解決と成果
右も左も分からない中、業務をこなすうちにさまざまな課題が見えてきました。
- 月次発注会議はあったが、在庫が見える化されていない
- 状況悪化時の対応検討が不十分
- 繁忙時に行った値上げ価格が据え置かれている
在庫が溜まってしまった原因
2つの要因がありました。
- 欠品回避のためにとにかく発注
- フォーキャストのブレと発注残の照合不足
繁忙期の部品確保は発注合戦
繁忙期の営業は数字が上がる反面、常に欠品の恐怖との戦いが続きます。
- 業界問わず、各業界設備に使用される機能部品がある
- ※機能部品=機械を高精度で動かすためのコア部品(ほぼ全ての機械で使用される)
- 好況時には機能部品メーカーに発注が殺到し、キャパシティが不足する
- 高値で発注し続ける会社が、優先で納品される
顧客への欠品はあってはならないことなので、当然商社としては部品確保に奔走します。
これは好況の忙しい時期は当然のことですし、自分でも同じ動きをしていたと思います。
気を抜くと積み重なる在庫の山
しかし、自分の安心だけを求めると過剰発注となります。
当然景気には波があり、急激な不況が来ると在庫の山が完成します。
- 機能部品はキャパシティ不足で納期が発注後、半年以上まで延びる
- 将来の部品を確保するため、半年以上先の発注を掛ける
- 一方で、その間に目先のフォーキャストはブレる
- 都度見直し、発注数の調整が出来ていないと山が膨らんでいく
部品納期が延びる分、一定の景気が継続する前提で、未来の分の部品を発注します。
未来の景気をどう読むかがポイントなのです。
最悪のケースを見据えてやっておくべきだったこと
絶対に景気の波はやってきます。それでも事前準備は可能です。
- 毎月フォーキャストのブレと発注残を照合し、在庫リスクを可視化
- 在庫リスクをお客様にもご理解頂き、双方合意の上での発注
- もしもの場合の対応を事前相談
常に最悪の場合を想定し、リスクを把握しながらお客様と一緒に事業を支えていくことが大切です。
イケイケGoGoではいけないのです。
「時すでに遅し」からの新人の巻き返し
起こってしまったことは変えられません。
ここからは、愚直に対応をするのみ。3ステップで臨みました。
- 過去発注経緯の精査と自社の管理不足分の明確化
- 今後の在庫管理ルールの策定と提案
- 価格適正かとシェア見直しのご相談
自分たちの責任を把握し、認めるところがスタート
ただ買って下さいと言うのは論外。筋を通してこそ。
- 発注会議は存在していた
- お客様もサインはして下さっていた
- フォーキャストのブレの管理不足は自分たちの責任だと認識
- 裏を返すと、フォーキャストのブレ以外はお客様と合意の上の発注だった
事実に基づいて責任を明確にしていくことが必要でした。
これはお客様も承認していたこと。これは弊社がリスクを承知で進めていたこと。
この情報整理が1stステップです。
次からどうするの?が一番大事
「それでは、お客様合意分は買って下さい。」なんて言っていては話にならない。
- 今回はリスクを最適化するのが営業の役割だった
- それをやり切れていなかったのは自分たち
- 再発防止案を出して初めて相談が開始出来る
交渉するにも、まずは自分たちの非を認めるところからです。
真摯に向き合う姿勢で、お客様の信頼を勝ち取っていくことを最優先しました。
非を認めた上で、「次からかこのように進めさせてください」という再発防止策をご提案しました。
新人が考えた再発防止策
新人なりに頭を絞っても革命的なアイデアが出るわけではありません。
当然のことをやっただけです。
- 毎月のフォーキャストと発注残を照合出来るExcelファイルの作成
- Excelファイルから作成した発注計画表を毎月お客様に提出
- 合意、押印を頂いた上での発注実施
- 有事の際は一緒に協力してどうするか考える
お客様の最高のパートナーになることを最大目標として動くのみです。
お客様が手間なく、リスクを把握し、双方合意の上で仕事を進める仕組みにしました。
ご担当の方は真摯な姿勢を評価してくださり、話が少しずつ前に進みました。
在庫問題、ついに決着
ついにこの時が訪れます。
- 上司同伴でお客様に今後の対応方針を説明
- 最適化後の価格提示
- シェア見直しの合意獲得
この会議の前には何度も担当者同士で打ち合わせを行いました。
上手くいくのかと唾を呑みながらの会議。お客様の部長との面識も初めてでした。
お客様のご担当の方も事前に話を通して下さっていたようで、何とか交渉は成立。
この時味わった、泥臭さの先にある達成感は、今でも宝物です。
家業を見据えて
この時思ったことは以下です。
- 家業も同じ製造業であり、在庫管理は必要なスキル
- 信頼して頂くための苦労を家業に戻る前に経験出来てよかった
- このまま営業力を磨くことが出来れば、絶対に家業に価値をもたらせる
ここからは、当時を振り返りつつ、家業への還元についてご紹介します。
なぜいきなりの苦境に立ち向かうことが出来たのか
これはこの記事で一番大事な部分だと思います。
- 家業に価値を持って戻るという圧倒的な目標があったこと
- 目標があり、全ての苦労をスキルに変換して捉えられたこと
- その姿勢を見て応援してくれる方々がいてくれたこと
同じ部署の先輩方はもちろん、当時のお客様には心から感謝をしております。
今でも連絡を取らせて頂き、プライベートな近況報告までさせて頂いております。
家業への還元を考える
苦境に立ち向かうための活力の源泉は、目標を持って日々の業務に向き合うことです。
その思いは必ず周囲の方に伝播し、どこかに必ず応援して下さる方が見つかります。
そこで自分は2つのことに取り組んでいます。
- この思いをロゴやミッションに反映させる
- ロゴやミッションで謳うだけではなく、仕組みに落とし込む
ロゴやミッションについては、私が最も信頼する方の1人にデザインを依頼して決定しました。
詳しくは経営方針のページに記載しております。
私の実体験と家業の59年の歴史を重ね合わせたものになっております。
しかし、ロゴやミッションだけでは、ただの飾りです。
これを今後どのように仕組みに落とし込み、浸透させるかが最重要テーマです。
私は以下のアプローチを進めております。
- 自分自身がミッションを体現すること
- 私自身が、会社の先輩方に対して未来についてを語り続ける
- 一つでもいいからミッションを体現した事例を先輩方と作り上げる
- それを持続させる目標設定と評価のプロセスを仕組みにする
1,2は私が主体となって出来ることなので、日々奮闘しております。
具体的に何をしているのかについては、また記事にしますので、ぜひ読んでください!
3は先輩方の意見をお聞きしながら5S活動を進めるなど、小さなことから始めております。
4は簡単ではありません。今は仕組みを回すだけの余裕がありません。
最大効率でものづくりに励むことで毎日が終わってしまいます。
そう、目標設定に時間を割ける状態を構築する必要があるのです。
「新メンバー雇用or目標設定のための残業」を可能にするだけの利益の確保が必要なのです。
投資として利益確保の前に仕組みを動かすことも可能かもしれません。
しかし、大手やベンチャーと町工場は違います。簡単なことではありません。
だからこそ私は、まず自分がミッションを体現することを胸に、頑張り続けます。
そして必ず、売上・利益を拡大し、家業を最高の町工場にしてみせます。
ご紹介
家業での取り組みを活かして中小企業の事業承継問題に少しでもご協力出来ないかと思い、
Legacy Linksというサービスを立ち上げました。
色々な方と繋がりたいの一心で動いております。ぜひお話しさせてください。
記事を書いている芝田有誠です!
どんなことでも構いません!ぜひコメントお願い致します!
コメントを参考に、面白い・読みやすい記事を心がけてまいります!